どうも、551ページ(+解説30ページほど)にわたる「シェークスピアの驚異の成功物語」(S.グリーンブラット、白水社)を読みつつあるSt.Ivesです。
ちと書名が冴えない気もしますが、16世紀後半から17世紀にかけての政治・経済・宗教・文化状況とシェークスピアの作品群に基づく、すこぶる面白いシェークスピアの「伝記」であります。ここまで読んだ限りでは、シェークスピアの「結婚」にまつわる章が特に面白い、言われてみると「マクベス」夫妻ぐらいだよなあ、(ある意味)仲が良い夫婦って。
という本をとりあえず置いといて、本日帰りに摘み読んだ本が下記のもの。

「20世紀音楽」−クラシックの運命
宮下誠著 光文社新書 446ページ
新書にしては非常に分厚いのですが、中はさらっと読める物でした。前書きはかなり長く、20世紀音楽の受容に当たっての心構えを述べていまして、ふむふむと思わせるところや、14、15ページの音楽の需要・受容についての部分をはじめとして、私と同じ考えの所も多々あります。ただ13ページについては、ちと違って、どの時代にも忘れ去られる駄作しか書けない作曲家がいるだけだろうという気がしていますけどね。
さて、中身はというと、即物主義的作風の作品が好きなんだろうなあという感じでありました。
・19世紀後半以降の筆者が主要と思う作曲家について簡単な紹介がされているのですが、これが20世紀後半の作曲家、特に著者が「『むずかしい』と一般には思われている」作曲家になると明らかに書く分量・内容が少なくっております。最近の動向や作品は殆どフォローされていませんで、ブーレーズが一時代前のソナタの2番、3番、それに「ルー・マルトー」に「プリ」という感じでしてねえ、まあ趣味的には同意するけど、最近のカラフルな作品群にも言及しないとバランスがとれないんじゃない。
・著者も読者に対して断っているのですが、20世紀のマイナーなオペラの筋書きを長々と書いていて、もうすこしはしょって他の作曲家を紹介したらという気になります(ヒンデミットやアイスラーの分量が非常に多い。でもヘンツェは非常に少ない)。もっとも、フォン・アイネムについて、また、彼のオペラ「ダントンの死」をこれだけ取り上げた日本語の本は他にあんまりないとは思いますが。なお、同書では、病気によってクレンペラーがこのオペラの初演を振れなかったと書かれていますが、実際のところは、振る気がないのに振ると言って、何の準備もしてこなかったので、急遽「休養が必要」として、ザルツブルク音楽祭事務局はフリッチャイを代役に立てたのでした。
・紹介している作曲家は、リームより若い人はいないし、ブリテンと武満については他の作曲家の端っこで触れられているのが奇異に見えたのでした。その一方で、エックとかマリピエロ、カゼッラとかも取り上げられていまして、それなりに面白いのですけど、カゼッラが「イタリア狂詩曲」だけというのものなあ。入手しやすいCDで選んだということですけど、あれが代表作ですと言われたら、カゼッラはあの世で泣いていると思うんですけどねえ。せっかく大規模宗教作品からピアノ曲まで20枚近いCDが出ているんで、もうちと精査してほしかった。
・因みに、アイヴスに割かれた分量は2ページ程で、交響曲第2番と第4番と妥当なところが取り上げられていました。一方、リゲティは2ページ半で、アトモスフェール、ルクス・エテルナに「グラン・マカブル」と偏っていまして、80年代以降の作風を代表するピアノ協奏曲、ピアノ練習曲集第2巻、ヴァイオリン協奏曲は入れて欲しかったなあという気がしましたけどね。
というわけで、入門書にしても内容が散漫過ぎて、かつ「音」が聞こえてこないので、お勧めしかねます。前書きでは、実際に聞いて欲しいと書かれていますけど、うーむ、聴こうという気にさせるのがこういう本の役割なのにこれではちと難しいのでは、という感じ。現代音楽の紹介ならば、パルコ出版の「現代音楽CDX100」がよろしいんじゃないのでしょうかね、片山先生も書いているし。
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