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近現代クラシック音楽愛好家の徒然草。

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2007.02.17 Sat » アヌイ「ひばり」

2月16日 シアター・コクーン

開演 午後7時 
終演 午後10時半 (途中に休憩15分を挟む) 

「ひばり」

 作 ジャン・アヌイ
翻訳 岩切正一郎
演出 蜷川幸雄

(配役)
ジャンヌ    :松たか子
コーション   :益岡 徹
異端審問官   :壤 晴彦
検事      :磯部 勉
ラドヴニュ師  :横田栄司
ウォーリック伯爵:橋本さとし
シャルル(7世):山崎 一
ヨランド王太后 :阪上和子
王妃      :月影 瞳
アニェス    :小島 聖
大司教     :品川 徹
ラ・トレムイユ :久富惟晴
ボードリクール :塾 一久
ラ・イール   :妹尾正文
ジャンヌの父  :二瓶鮫一
ジャンヌの母  :稲葉良子
ジャンヌの兄  :掘 文明


席はB列中央

四半世紀も前に読んで以来、一度生で見てみたいと思うも、劇団四季が時々取り上げていたにもかかわらず、中々その機会が巡ってこなかったが、ようやく見ることが出来た。そしてあっという間の3時間半であった。これほどのものであったとは。

「ひばり」(1953年初演)は、ルーアンでの宗教裁判において、ジャンヌ・ダルクがドン・レミから当の裁判に至るまでの人生を再演する格好で異端審問を受けるという一種の裁判劇。「ひばり」とは、「いやらしいところ下賎なところもあるフランス、しかし時として、天高くかけて、それを忘れさせる存在がある」(ウォーリック伯)。ジャンヌ・ダルクがそれだと。

時間的に近いP.クローデル作品(オネゲルのオラトリオ「火刑台上のダンヌ・ダルク」)が愛=自己犠牲的な側面を取り上げているのとは異なり、消し難きものとしての「人間」を高らかに謳いあげる。よって、ジャンヌ・ダルクの生涯を幾つかのシーンに分けて追いかけながらも、クローデルをはじめとする諸作品と異なり、最後は火刑台上のシーンから一転して輝かしいランスの戴冠式シーンで終わる。異端審問に「はい」と言ってしまい、そのまま暗く沈鬱に絶望的に終わるオーウェルの「1984年」の結末とは大きく異なり、ジャンヌ=人間は決して死なない。

演出については隙間無く、3時間半の長丁場を観客に高い集中力で見向けさせるような仕掛けでびっしりと埋め尽くしていた。それについて書くと本当に切がないので、ここは「さすが蜷川である」の一言で終えておく。とはいえ、これも役者がそれに応えたからであることは言うまでもない。

まずはジャンヌ役の松たか子。美人というよりはかわいい顔だが、髪を短めにして中性的な(あるいは少年的な)雰囲気を出しつつ、大きな目を生かした豊かな表情(瞬間的な切り替えも含めて)と軽々とした動きで熱演にして好演。セリフも最後まできりっと引き締まっており、劇を成功に導いていた。それにしても、彼女がシャルルに「勇気」を説くシーンは、セリフといいその台詞回しといい、野田秀樹のどこかの作品をを思い起こさせた(その論理も野田的だったので、野田がこっちを参考にしたのかなと今様ながら思うのだった。そういえば、見にいけなかったけど、野田版「罪と罰」にも松たか子は出ていたなあ)。

また準主役陣がいずれも良い。まず存在感ばっちりだったのは、壤 晴彦演じる異端審問官。あの声と表情で迫られたら、泣きながら「はい」と言ってしまうだろう。ドストエフスキーの「カラマーゾフ」でも同名役を見てみたいものだ。

続くは、「ピンクのバラの人」ウォーリック伯を演じる橋本さとし。伊達貴族然(リチャード三世の肖像画を思い起こす)とした立ち居振る舞いといかにもっぽいせりふまわしに多少笑いを覚えつつも、舞台に覚めた感覚をもたらし、「空虚な人間」としてジャンヌにある種の羨望を持つ人物を浮かび上がらせていた。

ただ、これは役者に言ってもしょうがないが、当時は「イギリス」も「英国」も存在していないので「イングランド」とセリフでは言って欲しかった(かつ「イギリス」と「英国」とセリフによって異なっていたのも違和感がある。せめてどちらかに統一して欲しかった)。

もう一つ言うと、ウォリック伯リチャード・ビーチャムがどうしてピンクのバラを持っているのか?「ヘンリー6世第1部」(シェークスピア)で白バラを手にしたはずなんだが...(娘婿のウォリック伯リチャード・ネヴィル<1428-1471>だったら、”キング・メーカー”として赤バラのランカスター家ヘンリー6世と白バラのヨーク家リチャード4世の擁立と廃位を行っているので、ピンクのバラこそ相応しいと思うのだが)。

そして、コション役の益岡徹。時々舌を噛んでいた(笑)。とはいえ、不安にさいなまれた実に良い人ぶりであった。コションは、他のジャンヌ物ではかなり悪役、かつ史実をみても生臭坊主そのものだったようだが、この作品では、イングランド占領下で立ち居振る舞いを考えつつも(彼から見た)最善をなそうとする人物と描かれているので、とても似合っていた。

最後に小心で利己的な、それゆえフランスに絶対王政(官僚制と常備軍)の道筋をつけたシャルル7世演じる山崎一。ジャンヌとの最初の謁見シーンで逃げる際にカツラが取れるハプニング(?)を起こしていたが、笑いとシリアスな場面との上手い切り替えの妙が楽しい。

そうそう、非常に嫌味っぽい、しかし異端裁判でジャンヌにいいようにやられた坊さん達のおろかさとせせこましさを持った、味のある検事役の磯部勉を忘れるところであった。

もう一回見に行きたいが、チケットは売り切れ状態。ヤフオクでも結構な値段で、かつ今月はドレスデン、チューリヒ、新国の「薔薇」のためにお金もない。どうしたものだろうか?




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