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近現代クラシック音楽愛好家の徒然草。

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2008.01.02 Wed » op.109の聞き比べ

どうも、久方ぶりにクンデラの「裏切られた遺言」を読み返したSt.Ivesです。悩ましいですなあ、ストラヴィンスキーの自作自演は「正しい」かもしれないがつまらんですから。かといってバーンスタインのストラヴィンスキーを聞こうとは思わないんですけどね。音楽の場合は、楽譜に書かれたものをどう伝えるかが重要なわけなんで、やはりモーゼにはアロンが必要だと。もっとも、勝手な解釈が行き過ぎるとご存知の通り混乱するわけなんですが。


そんなこんなで、音友のレコ芸1月号恒例のレコード・アカデミー大賞の器楽曲部門受賞CDである仲道郁代の弾くベートーヴェンの最後の3つのソナタ集を先月購入し、まず32番を聴いて、ふーむこれが内田の29番を蹴落としたのかねと思いつつ、続いて30番を聴き始めて、何か自分の知っている30番と感じが違うなあとの思いがふつふつと沸いてきたので、たいして枚数を持っていないけど聴き比べをしよう、ただし全曲はきつい(といっても20分弱なんだけど)ので、1楽章と2楽章だけならば一ピアニスト当り5~6分ですむなあと開始。

1.ヴェデルニコフ(DENON)
  私の基準。31、32番とあわせて無人島に持っていく1枚の有力候補。格調高く、真っ当で、推進力も十分。これで録音がもうちょっと良ければなあと思うのだが、残っていただけ感謝すべきでありましょう。

2.リヒテル(PH)
  彼としては不出来なのでは?ライブでミスタッチはお年からしてしょうがないにしても、全体にぶっきらぼうで、のっぺりとした感じがする。録音のせいもありましょうが音も浅い。正直なところあまリヒテルの残した録音では感心・得心しない1枚。

3.内田(PH)
  ヴェデルニコフに次ぐこの曲の私の基準。テンポ設定、タッチの変化、ダイナミックレンジの変動のいずれをとってもお見事。実演も素晴らしかったが、この録音も素晴らしい。

4.グリモー(WARNER)
  意外と言っては失礼だが、実は面白い演奏。表情付けやダイナミックレンジの変動も大きく採っていますし、時にペダルを下まで踏みっぱなしかと思われる部分もありで、興味深く聞けます(後一歩で変態の森の住民になれそうだったのに)。ただし、例のごとく気合や息の音が非常に良く聞こえる「一生懸命な」演奏なので、聞いていて落ち着かないのが難ですか。

5.野平
  録音、タッチ、いや何もかもがクリアで、どこまでもきっちりとした演奏。冒頭から最後まですべて見据えた感じがします。一般的な意味で規範となる演奏ではないでしょうか(実は、電子ピアノで弾いていたとかそういうことはないですよね)。

6.チッコリーニ
  おじいさん、楽しそう。ちょっと適当なところもありますけど。でも他のソナタの方がもっとよい演奏があります。

7.ギレリス(DG)
  第1楽章、第2楽章ともに意外にテンポが遅く、やさしげな演奏。ギレリスのイメージからは異なります。

8.ブレンデル(PH)
  70年代の録音。真面目、面白味は全くない。でも推進力はあるので聞けなくはないです。

8.ポリーニ(DG)
  聞いていて鍵盤はさぞ痛がっているだろうなと思う、極めて剛毅で爽快感すらある演奏です(あるいは垂直方向への強い意志とでも言いたいような感じ)。鋼鉄の指の打ち込みでもって翳りも揺らぎもなく弾かれております。今再録しても、こんな感じでしょうかねえ。

9.グルダ(アマデオ<DECCA>)
  完全な偏見ですが、とてもスイングした演奏(32番でもないのに)。お気に入りの1枚。

10.レヴィナス(ACCORD)
  変態の森の住民。風呂場のカラオケ状態の録音に加えて、一体どうやって弾いているのかと思う奏法が実は成功してしまった感もある演奏。左手は殆ど音の塊が動き回っているだけで何が弾かれているか良くわからんけど、IRCAM系作曲家の新作みたいです。

11.グールド(SONY)
  変態の森の住民。この猛烈なテンポについてバーンスタインに解説をお願いしたいです。私には適当に旋律線を区切ったり、適当にスタッカートをかけたりしているようにしか聞こえませんが、きっと対位法的な何かを目指しているに違いない、きっと深い考えがあるに違いない、きっと...。

12.アファナシエフ
  変態の森の住民。唖然とする低速度でぶっきらぼうに鍵盤を叩きまわる一方で、戦慄を覚える弱音を奏で、その合間に永遠かと思える休符を挟んでおります。

13.ムストネン(BMG)
 変態の森の住民。しかし、変態度はグールド、レヴィナス、アファナシエフを上回る(仮にシュタットフェルトが30番を弾いても追いつけないでしょうねえ)。もし私がピアノ教師だったら絶対に教え子に聞かせないだろうなあ。猛烈なテンポのスタッカートで弾きまくっている最中に突然ゲネラル・パウゼを入れられるので、聞いていてつんのめります。一体どんな楽譜をみているのでしょうか、あるいはどんな検討の結果でこうなったのでしょうか?

14.エッシェンバッハ(EMI)
 さえざえとしたタッチと青白い狂気が感じられるような音。実は名演だと思います(指揮したCDではこんなギリギリに追い詰められたような狂気じみた表現をついぞ聴いたことがないのですけどねえ)。

15.シュナーベル
 グールドか?と思えるような速いテンポで、音価も短めに切ってノリノリに進むんで、これが楽譜の校訂までした「名人」による「正当」な演奏だとすると、ヴェデルニコフこそ「変態の森」の住民でしょうか?(聞く都度に、安売りの妖しいレーベルではなくEMIの正規盤を買って確認しようと思うのですが、常に後まわしにしてしまいます)。

ということで、仲道。

16.仲道
  録音のせいかもしれませんけど、タッチはそれ程深くない感じ。上記15人との比較で言えば、フォルテ方向を中心にダイナミック・レンジはあまり感じられず。全体的にスケール感や力感はありません。淡々と言うわけでもなく、さりげない表情付けを行っているので、良く言えば自然体、親密さを感じさせる演奏、悪く言えばこじんまりとしたあまり面白味が感じられない演奏です。テンポを遅めに採っている訳ではないのですが、推進力(拍節感)を感じられませんので、私としては楽しめません。今はやりの癒し系とでも評しましょうかね。


なお、私が聴きながら眺めていた楽譜はヴィーン原典版です。



モーゼとアロンになぞらえれば、ムストネンなんかはアロン度100%の演奏だなあと思うSt.Ivesでした(で、野平がモーゼ度100%かな。つまらないという意味ではないですよ)。
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