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近現代クラシック音楽愛好家の徒然草。

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2010.04.16 Fri » 1Q84 Book3 p.534

どうも、ということで読みえ終えました。なんちゅうか、3重フーガのつもりかもしれませんが、不幸な牛河氏の探偵物語を主旋律に、Book2がミニマル音楽のように繰り返されてそれをぶった切っていくという感じでありまして、新たに書く必然性は無いような気がしました(牛河氏の探偵物語は相応に面白かったが、やはり彼の心の欠落のようなものは伝わらんなあ)。Book2の不確定な結末で済ませておいた方が、まだ色々と想像できたでしょうに、無理やり、シェーンベルクかベルクのように素直に非常階段を上って逆行すればいいじゃん、やはり米国版「フランダースの犬」のようにハッピーエンドなのね、という最初から読めていた結末に持って行こうとした話でありました(それを言うならば、Book1のみで未完にしておけば、壮大な未完の物語でよかったのですけど)。まあ、金属バットで青豆がリトル・ピープル(略称LP)を叩き潰さなかっただけ進歩はありましたがってBook4がありそうだねえ、LPは空気さなぎまた作っていたし。

それにしても、p.534のタマルのセリフは、個人的にはとってもトンデモなものでありました。

「世界はナチズムと原爆と現代音楽を通過しつつも、なんとか生き延びてきた」

まあ、登場人物のセリフだということで逃げは打っているでしょうし、こういう指摘自体を検閲だとか言葉狩りだと「静かに逆切れ」するんでしょうけど、結末、プロット、雰囲気のいずれもシェーンベルクの「清められた夜」や弦楽四重奏曲第2番、「月に憑かれたピエロ」からパクったことがスケスケに見えているのに、その人物の諸作品を含む現代音楽と看做されているカテゴリーを、ナチズムや原爆と同一視する厚顔さがに呆れますなあ。当該箇所は、「現代音楽」という単語を登場させる必然性が全くないだけに、作者の素直な認識がポロッと出てしまったのでしょう。


それにしても、ナチズムや原爆は、個人の尊厳を認めず、不当に人の権利・命を奪い、この作品の結末で感じられる未来への可能性やその挑戦の機会を一方的に奪い取っった主義・システム・行為であるのに対して、現代音楽は単なる個人「趣味」の問題でしかない(さらに「現代音楽」といっても、私が好きではない「調性音楽つくるならもっと面白い曲をつくれよと思う吉松」から、私が好きな「複雑すぎて作曲家自身も実は分かっていないのではと思われるファーニホウ」まで極めて幅広い)。にもかかわらず、現代音楽を20世紀における最大級の犯罪的行為、倫理的な最重要問題と同一地平線上にあげる作者の認識は、「やれやれ」で済まされず、根本的に決定的に誤っております。



ブリテンの「戦争レクイエム」もシェーンベルクの「ワルシャワの生き残り」もダラピッコラの「囚われ人」もライヒの「ディファレント・トレインズ」も芥川の「ヒロシマのオルフェ」もノーノの「断ち切られた歌」もヘンツェの「交響曲第9番」もハルトマンの「ミゼレーレ」もグレツキの「悲歌のシンフォニー」もツィンマーマンの「軍人たち」もティペットの「我らが時代の子」もマルティヌーの「リディチ村の思い出」もHaruki Murakamiにとってはナチズムや原爆と同じですか、そうですかという感じのSt. Ivesでした。
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